倚天 仲合、同盟会話
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仲合物語
一意専心
邪魔しないように私っはそっと近づいた。
集中しているのか、倚天は私の存在には全く気付かない。
しばらくして、
ようやく剣を下ろした彼の顔を見ると、眉を顰めていた。
私が倚天の姿をじっと見ていると彼と目が合った。
倚天:無剣、何か用?
無剣:いえ、あなたの稽古を見ていただけです。
無剣:稽古はいつもお一人でやっているのですか。
倚天:剣の道を極めるにはすべての邪念を払い、
外界に惑わされてはいけない。
無剣:さっき眉を潜めていたのは、私が集中を途切れさせてしまったからですか。
倚天:いや、君とは関係ない。
倚天:この身はまだ修行中、たやすく外界に気をとられてしまう。
無剣:外界に気をとられてしまう…
…あっ、やはり私のせいですよね、ごめんなさい。
無剣:それじゃあ、私はこれで…
倚天:待て。
立ち去ろうとした私を倚天が呼び止めた。
無剣:え?
倚天:…今日の稽古は終わった。俺も今から帰るところだ。
無剣:じゃあ一緒に帰りませんか。
倚天は無言のまま、静かに私の前を歩く。
ゆっくりと歩きだした彼の後ろ姿を見て、
思わず安心感が湧き上がってきた。
尋道自明
無剣:倚天、剣の修業はいつから始めたのですか。
倚天:なぜ、そのようなことを。
無剣:あなたはいつも剣の修業をしているので、
以前の姿が少し気になっただけです。
倚天:蛾眉山に入った以来、ずっとだ。
無剣:蛾眉山?
倚天:聳え立つ山々、囀りを上げた鳥たち、そしてなにより
倚天:頂上で雲海を眺めると、心が安らかになり、
剣の道に没頭することが出来る、最高の修行場だ。
無剣:道、というのは一体?
倚天:道は路、自分が選択した人生。
無剣:それが、剣に生きるあなたの選択なのですね。
倚天:そうだ、私が目指すのは剣の頂、ただそれだけだ。
無剣:そうですか。
いつか剣の道を極めた先には何も求めるのですか。
しばらくした後、倚天が答えた。
倚天:それを極めるのは、果てしなき道。
今は全力を尽くして、自分の限界を超えるだけだ。
その言葉に、私は圧倒された。
無剣:私の道は……
そう考えた途端、私は言葉を詰まらせた。
倚天:心を落ち着かせれば、道は自然に見えてくるものだ。
私の独り言に倚天は答えてくれた。
無剣:道を…示してくれたのですが。
倚天は静かに首を横に振った。
倚天:いや、ただ…君は私と同じかと。
無剣:「同じ」とは。
倚天:いつか君も私と同じように自分の道を選んでいくのだと思ったのだ。
剣意孤独
彼も、私が側で稽古をみている事を受け入れているみたいだ。
ひたすら稽古に没頭する倚天の姿は、
まるで外界と隔離された世界に入り込んでいるようだった。
無剣:倚天、一人で修業する事に寂しさは感じないのですか。
倚天:剣の道は、まず孤独に慣れる事から始まる。
無剣:どうしてそこまで孤独にこだわるのですか。
人と切磋琢磨して共に上を目指す道だってあるのに…
倚天:究極の剣道を求める者は、みな、常に孤独です。
ただ、自分の剣道をわかってくれる人に出会えたなら、それは自分の理解者であり、かつ、宿敵です。
倚天…あなたは剣の道には、
孤独でなければならないと思っているんですか?
倚天の進む道を聞いて私はそれを認められないでいた。
無剣:あなたがそこまで孤独を求める理由は分かりませんが、
独り孤独に剣の道を究めていくのはとても寂しい事だと思います。
倚天:寂しいか…
その感情を生涯味わう事が出来る人は、
この世界にどのぐらいいるのだろうか。
倚天:そして、それは身を持って体験しない限り、
分かるはずもない。
倚天の言葉を聞きながら、
私は目の前に広がる海に目を向ける。
無剣:もしあなたが、この果てしない海に独り、
右も左も分からない状態となった時、どうするつもりですか。
倚天:関係ない、稽古を行うだけだ。
どんな場所であろうと剣の腕は上達する。
迷いなく即答する彼に、私は思わず笑みをこぼした。
無剣:本当に剣術バカですね。
あなたにとって、剣より大切なものはないのですね。
無剣:剣と共に生きているから寂しいなんて感じないですよね。
私の存在は余計な…
倚天:いや…
倚天は言いかけた言葉を飲み込み
倚天:感謝します。
無剣:感謝?
倚天:無剣、先ほど話してくれたことに、感謝する。
倚天:こうして君と並んで話していると、なんだか…
言葉の続きを待ったが、彼はもう何も言わなかった。
無剣:どうしたんですか?
倚天は静かに首を横に振り、
目の前に広がる海を視線を向けた。
倚天:…すまない、うまく説明が出来ないんだ。
無剣:そうなんですか。私は嬉しいです。
無剣:剣術バカのあなたが、
こうして私と話をしてくれているだけで。
無剣:また一緒にお話ししてもいいですか。
倚天:稽古の時以外であれば、別に問題ない。
彼は軽く頷き、普段めったに表に出さない優しさをそっと隠した。
畢生の望
屠龍:無剣?!
倚天:無剣?!
倚天:私がずっと求めていたのは……まさか……
剣塚で見せたあの倚天の様子を思い出すと、
なんだか少し気になる。
あの日…倚天は何を言いたかったのか。
私に対して何度もはっきりしない態度を思い出し、
倚天に聞いてみることにした。
無剣:倚天。
倚天:……どうした。
無剣:私はどうしても知りたいのです。
あの剣塚で倚天が言いかけたあの言葉について。
無剣:あなたが目指している剣の道…
それに私が関係しているのですか。
倚天:関係…
あると言えばあるが、ないと言えばない。
無剣:……はっきりしない返答ですね。
倚天:…私が以前言っていた剣の道を究めるという言葉、
まだ覚えているか。
無剣:ええ。
倚天:過去でも、これからの未来でも、
自分の目標を変える事はないだろう。
倚天:それでも、一つだけ変わったことがある。
無剣:変わったこと?
倚天:以前言っていた
「自分の剣道をわかってくれる人に出会えたなら、それ自分の理解者であり、かつ宿敵」
という言葉も覚えているか。
無剣:もちろん、覚えてます。
倚天:唯一変わったこと…それは
自分の理解者を得た代わりに宿敵には出会えないことだ。
無剣:理解者ですか…
疑問に思った私が彼に目を向けると、
今までの中で一番優しい目をした彼の顔があった。
倚天:君が前にもし自分独りで海に取り残された時、
寂しくないかと聞いてくれたが、
あの時、私にはその実感はあまりなかった。
倚天:君から話し掛けられる度、どんどん惹かれていく自分がいた。
その気持ちがようやく腑に落ちた。
無剣:どういうこと?
倚天:そして今、生涯目指すものが分かった。
倚天:君はどうだ?
無剣:私は…
自分の過去についてはこの間のことで分かりました。
でもそこからどこに向かうのか、目指す道は何なのか、
その答えはまだ出せていません。
私の答えを聞いて、
倚天はいつも剣を握っている手を差し出した。
倚天:それなら、私が示そう。
君が進むこれからの道を。
倚天:過去にこの手が握っていたものは、剣だけだった。
そしてこれからも剣の道を歩み続けていく限り、握り続けるだろう。
この道に君も同行してくれないだろうか。
私は差し出された倚天の手を、
そっと握りしめた。
同盟会話
○○の倚天:剣というものは、守るためでも殺すためでもないのだ…
○○の倚天:剣の道を極めたその先には、私もいまだ至っていない。
○○の倚天:はぁ、私にとっては、過去に歩いていた道の方が頂点に近かったかもしれない。
○○の倚天:私も修行に専念する以前に、江湖を遊歴したことがある。
○○の倚天:もし機会があれば、ぜひ武当山へ訪ねて眞武道長の巧妙な剣技を見学させてもらいたいものだ。
○○の倚天:うむ…海外を遊歴することも悪くない。
○○の倚天:もし木剣が剣境を破壊しようと企んでいるのなら、君くらいの境界に達しなければならない。
○○の倚天:その夢の一族は魍魎でもないのに、一体何のために?
○○の倚天:まさか…これも木剣の仕業なのか?
判詞
二句目 仏の光背に浴びて雪の如く和む心
三句目 赤子の熱血を持して海を沸かし
四句目 氷の心を持して天を冷やす
五句目 独り身で少室の山に登り
六句目 千万の軍を率いて天山を下る
七句目 一生は剣のために暮らしてき
八句目 誇り高き自尊心がとめどなく溢れ
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コメント
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・私も修行に専念する以前に、江湖を遊歴したことがある。
もし機会があれば、ぜひ武当山へ訪ねて眞武道長の巧妙な剣技を見学させてもらいたいものだ。
うむ…海外を遊歴することも悪くない。0
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